1960年代末から1970年代初頭にかけて、AIの実用化に向けた技術的な困難や限界が次第に顕在化した。研究成果は期待された水準に届かず、実社会での応用も難しいことが徐々に明らかとなっていった。AIに対する過度な期待と現実との乖離が次第に明らかになるにつれて、政府機関や研究者の間で失望感が広まった。
特に大きな転機となったのが、1973年にイギリス政府の依頼でライトヒルが作成した報告書Artificial Intelligence: A General Survey (通称、Lighthill Report)である。この報告書では、AI研究を「カテゴリーA:Advanced Automation(高度自動化)」「カテゴリーB:Bridge Research / Building Robots(橋渡し研究/ロボット構築)」「カテゴリーC:computer-based studies related to the Central Nervous System(中枢神経系に関わるコンピュータモデルの構築)」の三領域に分けた上で、それぞれの研究評価がなされている。カテゴリーAおよびカテゴリーCに属する研究に関する評価は、「チューリングが1947年に書いた論考“Intelligent Machinery”からの過去25年間に、尊敬に値する一定の進展がなされてはいるが、期待は何度も繰り返し裏切られてきた」というものであった。そしてカテゴリーBに属する研究に関する評価は、「(同期間における)進展は、実際になされた研究に関しても、また研究を遂行することに関する十分な理由の確立に関しても、もっと失望を誘うものである」というようにさらに厳しいものであった。こうした評価を受け、英国政府はAI研究への資金提供を大幅に削減し、多くの研究プロジェクトが打ち切られた。
Artificial Intelligence: A paper symposiumの表紙
[出典]
https://www.chilton-computing.org.uk/inf/literature/reports/lighthill_report/contents.htm
https://www.chilton-computing.org.uk/inf/pngs/smlighthill.png
本報告書は、イギリスのScience Research Councilが出版したArtificial Intelligence: A paper symposium.の中に収録されており、下記URLで全文をダウンロードできる。
Lighthill, J. (1973) “Artificial Intelligence: A General Survey”
https://www.aiai.ed.ac.uk/events/lighthill1973/lighthill.pdf
https://www.chilton-computing.org.uk/inf/literature/reports/lighthill_report/p001.htm
またBBCが1973年6月に放送した同報告書をめぐる論争に関する81分間にも及ぶテレビ番組、および、同報告書などの関連データを下記でダウンロードできる。
“BBC TV – June 1973 – Lighthill Controversy Debate at the Royal Institution”
https://www.aiai.ed.ac.uk/events/lighthill1973/